月別アーカイブ: 2011年12月

電子書籍の先

電子書籍に及び腰な出版社や著者を批判するのは簡単だけど、返本制度にしろ既存の商慣習が気に入らないなら、新しいマーケットを立ち上げて、参入してもらえばいい。著作者がどういう対応を取るかは外部がどうこう言える話じゃないんじゃないか。

大体電子書籍の未来はWebにあるのであって、Web上の執筆活動で食える人が出てこないと、電子書籍の未来が明るいとは言えないだろう。

ところが、実際はWebで書いていた人が書籍で書き始めるようなパターンが多いように思える。

Web出版の未来を体現できなくては、出版社が本腰を入れることはありえない。EPUBのような、消費者が選ぶ必然性がなく、おまけにコストがかかるものではだめだ。編集も必要になるだろう。Web上でコストを下げつつ、お金を払ってもいいと思えるコンテンツを作るにはどうしたらいいのか?

DLSiteとその流通しているコンテンツの内容に注目すべきと考えている。コンテンツの内容は簡略化され(ほぼCG集とか)、ニッチ向けの書籍が安価に売られている。これなら編集者いらないし。レイアウトだってないようなもので、単にhtmlやjpgをzipで固めて配布している所だってある。EPUB決めなきゃ、という発想自体がかなり守りに入っていると思う。

本業の人を古いとバカにするんじゃなくて、本業の人からバカにされる位の新しい仕組みを作るくらいじゃ無いと、何も変わらない。電子書籍で世の中変わる!みたいに言っている人は携帯小説くらい読んでいるのかよと。自炊の人権を守るのも悪くはないけど、本棚問題くらいしか解決しないし、その対象になるのも優良顧客とはいえ相当なニッチ層なので、この資本主義下でそこまでのサポートを出版社に期待するのも難しいとおもいねえ。

あと漫画のフォーマットの変化について。ストーリーのある四コマ(つまり四コマの必然性のない四コマ)が隆盛している理由は、そうした方が執筆側の労力が軽減されるからなんだと思う。よく考えてみると、4コマという形式はかなりWeb向きだ。現金な話、四コマ10本100円位で売れるのかなぁと。

Boogie Board Rip

買ってしまった。明らかに時期尚早ですありがとうございました。

寝床でのお絵かきに使おうかと思っていたが、思ったよりコントラストが低くて暗い場所では使えない感じ。どう考えても紙最強です。

いいところは面倒臭くないところ。まず紙の処理を考えなくていい。あと図表が書きやすい。今のところ文字入りの図表ラフを描いてPCに取り込みなんてことをやっているが、タブレットで文字を書くのってそういえばストレスフルだったな、と気付かされた。

また、タブレットドライバとかペイントツールとかインストールしなくても出先でちょっとした図を書いて送信出来る利点はあるかも知れない。(そんな機会があるかはわからんけど)

ペイントを立ち上げなくて済むというのは利点の一つではあるんじゃないかな。

取り込みはexeUSBとEvernoteのインポートフォルダの組み合わせで、USB接続→Evernoteへアップロード→USB切断まで、自動でやってくれるようにした。iPadの落書き→メール送信のフローよりは大分楽。

保存するだけで、本体で再表示出来ないじゃん、というのはあるんだが、自分の落書きなんて見返したいと思わないので問題なかった。むしろEvernote上でサムネ見ながらガンガン消せた方が快適。

一番気になった点は、スタイラスを結構押し込まないと描画されない(作りが安い)点と、Wake押さないと保存が開始されない点。Wake状態なのかどうかも気付きにくいので、タッチした時点でWakeするようになんとか改良して欲しい。

ソーシャルと祭り

http://markethack.net/archives/51790322.html

アプリインターネットだかどうだかは知らん(アプリケーションはコンテンツの閲覧に別に便利というわけではないので)が、ソーシャルにかける時間が足らないよ、という意見はかなり同意を集めている。大体生産的なソーシャルって何?という感じもしなくもない。

ソーシャルはノイジーすぎる。

Recent Events and my non-reaction

Flash用コンポーネントライブラリ、MinimalCompsの人が書いた記事。ちょっと知らない表現が多いので正確な意味は取れてないけど、おおむねこんな内容だろうか。

Flashモバイル開発中止の一件で、革命でも起こったかのような『Flash is dead』のお祭り騒ぎだ。私の耳とっては全部、泣き言と雑音にしか聞こえない。僕の友達は『Twitterはろくでなしになるための道具だ』と言い、もう一人はこう言った。

『きみは洞察的ではない。知的でもない。芸術家でもない。批評家でもない。詩人でもない。ただインターネットに接続できるだけだ。』

元々おとなしい自分でさえ、Twitterによって大きな声を手に入れてしまい、不注意にもその大声を使ってきてしまった。時間が経つにつれて、ぱっと思いついたことや、憤りをブログに投稿するようなことは控えるようにしてきている。元の自分が戻ってきたことが今は嬉しい。直近の出来事を聞いていないだけで世界はバラバラになったりはしないんだ。

とにかく、僕はTwitterやSNSを一時的に休んでいる。どれもこれも黒板をひっかくかのようだ。もっとノイズや最近の技術的スキャンダルへの意見じゃなく、ちょっとした役に立つ情報を書くようにしようと考えている。

今のTwitterは延々と続く宴会みたいなもので、いつかはみんな疲れてしまう運命にある。時間が足らないだけじゃなく、精神的な体力も足らないような気がしてくる。

ハレとケ、という概念についてしばらく勉強していて、ちょっと考えているのだけれど、今は「静かな物語的世界」が非日常の役割を果たす気がしている。日常はお祭り騒ぎで、夜になれば孤独感と虚脱感が残る。たまった鬱憤を攻撃と自己破壊に向けるよりは、妄想に。

ゲーム制作に使える大学知識まとめ

個人でゲームを作るのであれば必然的に学際的になるであろうという考えのもと、どんな知識がゲームに関連する可能性があるか、というのをまとめておく。正確ではないし最新の動向など知らない。うまいことまとまったら別の所で公開するかも。

大学で学べる分野のマップまとめ 

心理学

一番自分が詳しいというか専攻していました。ダントツで使えるのが「脳科学」。次点で「認知心理学」とか「産業心理学」だが、認知はちょっと基礎研究すぎるかも。「臨床心理学」はネタ元としてはいいけど基本的にポエムだと思った方がよい。

脳科学はもう医学の方が大分強いので気になるなら医学生になればいい。ご存じPETなどの金ドブ技術による脳機能イメージング研究が行われている。ただ必ずしもゲームのEnjoyness測定に脳の活性まで取らなくていいという話はあって、唾液の成分分析とかを指標に使ってる研究もあるらしい。ヘッドギア型脳波測定は精度が怪しいので安易に手を出さないように。

産業心理学は、社会心理学+認知心理学の応用といった感じで、スーパーでモノを買う人間の行動分析なんかをやっている。社会心理学は噛んでいる人たちの素性の悪さもあって、トンデモ研究が結構あるんだが、産業は売れるか売れないか、働くか働かないかという指標があるのでそこそこ面白いと思う。

臨床心理学は、フロイトとかユングとかロジャースとかいるが、主観で言うと、フロイトは今で言ったらはてなやってそう。ユングはTwitterで鍵かけてポエム書いてる系。ロジャースはlifehacker系。シナリオのネタ元にはいいのかもしれない(ユングの元型理論なんかは、神話の分析が元になっている)。

発達心理学は、よく引用される「マズローの欲求段階説」があるけれどあれも根拠的にどうかという議論があるので、したり顔で語る時は気をつける。あれは人をdisる時に使うものであって、一応成長しきった人間であるところのゲーマーには適用できない。

芸術学

哲学分野を除けば、大体見た目に関連する分野。はやり廃りはあるけれど、ゲームで使う芸術表現は一世代古くたって何の問題も無いので、勢いよくパクるべき。

絵画はもうやり尽くされている感があるので、ジャケットアートなんかのパロディ元くらいにしかならないと思う。みんな大好きICOなんかもキリコのパロディが使われている。黄金比を始めとする構図に関する研究がされているので参考にするとよい。あとは色彩表現のネタ元にする感じかな。絵画についての基礎的トレーニングには「ワコムアカデミー」がいいと思う。もっとみんなデッサンが出来てもいいような気はしているので。

彫刻は結構ネタ元として優秀だとは思うんだが、いかんせん取り上げられにくい。3Dプリンタなどを使った、アルゴリズム彫刻が結構熱い。本も出ている。

空間デザインはLED照明やELが出てくるに当たって、かなり重要な分野だと思うんだが、今のところ学問化されてはいないらしい。ブランドショップの内装を見るのが一番早い。インスタレーション系の展示会に行くのもよい。

グラフィックデザインは何故かタイポグラフィと一緒になって語られているので、両方の重要人物を抑えておくといい。グリッドレイアウトやフォントの歴史を勉強すると基本は抑えられる。デザインを洗練させすぎると、デザインの実験性が鼻について、ゲームの面白さからは遠ざかる気がするので、どや的なデザインはしない方がいいと思う。空気のように意識されないデザインが最もよいデザインとはよく言われている限り。

デザインについて新しめの情報を入れたい場合、安藤日記を参照することが多い。

色については佐藤可士和の「色はコミュニケーション」のような考え方が役に立つ。カラーコーディネートについては色彩の調和とか反対色とか色彩理論はあるけれど、教科書通り作ると見事にダサい感じになるので、おとなしく一線の作品からスポイトした方がいいと思う。モノが出来てからでないと、色の善し悪しはわからんもんで、頭でっかちに考えるとベストな選択肢を見逃してしまう。

音楽についても、プレイヤーとは保守的なもので、一昔前のモノを求めていたりする。最先端まで追う必要はない。でも想定プレイヤーより一歩時代を進めるほうがいい。モダンなテクノはDJMIXを前提に作られていたり、クラシックは形式そのものが規定されていたりするので、ゲームにもその辺りの知識が反映されるとよい。

映像は国内でもモーショングラフィックスが人気だが、海外ではごく普通の広告手法なので海外CMでも見ていればいいと思う。アニメーションは国内に蓄積もあり教材もありなのに、ゲーム作る人はあまり勉強していない。絵が描ける描けない関係無く、どう描けば動いて見えるのかは知っておいて損はない。

映画もゲームのパクリ元として再有力なもので、メタルギアなんかはそうだし、ムービーは極力ゲーム内から省く方がよいとおもうけれど、それでもいい演出手法は知っておくべき。 この辺のノウハウはハリウッドが持っており、ハリウッド理論を勉強しておくといいかも。Pixerのシナリオ手法も有名。

ダンスは、モーションの参考になるので、気に入るものをいくつかブクマしておくといいかも。肉体的な感覚はアニメーションの作り方に結構フィードバックされるので、自分でやってみるのもいいと思う。

情報科学・数学

数学からは、カオスやフラクタル、セルオートマトンなんかがよくネタにされていると思う。どれも人間が制御することは難しいものなので、どこに適用するかが結構難しい。

遺伝的アルゴリズムも、デモとしては頻繁に使われているネタで、アルゴリズムに対して適者生存をかけるもの。

他にも、AIやパターン認識なんかもよく研究されている分野。

ユーザビリティは、新しいものを作る為の勉強というよりも、当たり前のインターフェースを実現するために勉強したほうがいい。Appleのガイドラインが参考になる。

建築

構造に関する基礎知識や、空間の位置づけの議論が、マップの肉付けに役立つ。SF的な構造物を作るのであれば、構造的に説得力のあるものにしておきたい。

書き出してみると、結構狭いな自分。映画のことなんてほとんど知らんし。息切れ気味だけど、記事にする際はもうちょい調べて肉付けする。