月別アーカイブ: 2012年2月

欲求にフォーカスする

ゲームを作るときにゲームの勉強だけをしていると、そもそもどのような欲求にアプローチすべきなのかということを見逃しやすい。「リスクとリターン」みたいに単純化させすぎてしまうと、オモチャを作っているんだということを忘れてしまう。何かを作る上で、コンテンツを見ている人間の視線や行動をよく観察することが肝になる。

人の欲求や好奇心を引き出すものが、ゲーム以外にどんなものがあったかをよく知らないといけない。欲求には背景がある。ストーリーの先を見たいだとか、行動そのものに気持ちよさがあるとか、音楽と同期して手を動かすことが心地よいとか、いろんな攻め方があるものだ。「ゲームの名作」だけを遊んで、ゲームを作っている人に感じる違和感は、ゲームのメカニズムやネタ要素だけをコピーしていて、細かなサービスを忘れていることだ。

話がずれるが、中毒性を生み出すには、「リトライの敷居を限りなく下げる」ことが効果的で、これも「リスク&リターン」には含まれていない要素の一つだ。

「複数回の試行につき一回のリターンがある」ものが最もネズミが「はまりやすい」ゲームであると、心理学の授業で教わった。これはまさに賭け事のゲームデザインであって、スマホ向けのソーシャルゲームもそうだし、アンディーメンテのゲームなんかもそうだ。Wisplisp Heehawでは、ゲームのメニューを排し、ショットボタン一つでリトライ出来るようにスタート画面を変更した。

そもそも賭け事を行わない人間が居ることも、知っておくべきことの一つだ。自分がよく行っているのは、本屋に行って雑誌を立ち読みしている人が何を読んでいるのかのぞき見することだ。ゲームをしない人間が何に興味を持っているのか?言い換えれば、何に時間を消費しているのか?ゲーム要素などに興味を振り向けず、知的(?)欲求に時間を使っている人間も多くいるものだ。

ゲームメカニズムのコアは「リスクとリターン」でいいと思うが、多くのユーザに興味を持ってもらえるよう、題材を工夫したり、視覚要素を調整することは基本的なことだ。良く出来ているゲームが「名作」になりうるのは、それからの話だと思っている。

自分一人だけが使うツールを作らない

ツールとは、他人の作業を分かりやすく効率化するために作るのであって、自分だけが使うものであれば作るべきではないんじゃないかと考えている。

大抵の作業は、既存ツールの組み合わせでなんとかなる。つなぎあわせが悪い部分でも、バッチを組むことで結合することが出来る。そのバッチだって、OS組み込みのものだし、自作するより余程柔軟だ。

一連の作業工程をツールにまとめ上げるのは、一貫性を保ってクリーンに見せるのと、配備の手間を軽減させる意味がある。ただ、自分一人が使うツールがクリーンである必要がどこにあるのか。むしろシンプルであるよりも、複雑で柔軟なシステムを小さなソフトウェアの組み合わせで作る方が時間の節約になるだろう。

本来はツールを作るのが仕事のエンジニアだけれど、業務からそれて自分用のソフトを作るのが好きなので自戒としておく。

点+箱の演出

ライブしてきた。ライブする場所はラウンジだったため、スピーカーの音量が十分でないという予測を立てた(これは外れで、実際は低音は不足するものの十分な音量があった)。

音量不足対策として、以下のようなことを考え、実施した。

  • トラックとは別の「環境音」mp3を作成し、事前にTwitter, QRコード経由で配布した。
  • 観客のスマートフォンからmp3をダウンロードしてもらい、一斉に再生してもらった(自分でもいくつかポータブルmp3プレーヤを準備していった)。
  • 自然と再生タイミングがズレるため、立体音響のような効果が生まれる。

その他、演出として、ルミカライトを持っていき、配布した。

以前記事にも書いた「点と箱」の延長で、観客自身がスピーカーになり、観客自身が照明となる。そんなコンセプトのライブにまとまった。

ライブ中は、全然スピーカーの音聞こえないし、ルミカライトの演出効果がイマイチだったりして、あーこりゃ滑った、おわたと思ったのだが、見ていた人に聞くところだとそれなりに周囲の反応はよかったらしい。

静かなライブをすると、ステージに立っている方は相当心細い。ほとんどの客を持っていった藤子名人のライブを見ながら、うらやましく思ったのだった。観客が盛り上がるようなライブはいいよなぁ。せめてもっと没入感のあるライブと演出が出来たらな。