欲求にフォーカスする

ゲームを作るときにゲームの勉強だけをしていると、そもそもどのような欲求にアプローチすべきなのかということを見逃しやすい。「リスクとリターン」みたいに単純化させすぎてしまうと、オモチャを作っているんだということを忘れてしまう。何かを作る上で、コンテンツを見ている人間の視線や行動をよく観察することが肝になる。

人の欲求や好奇心を引き出すものが、ゲーム以外にどんなものがあったかをよく知らないといけない。欲求には背景がある。ストーリーの先を見たいだとか、行動そのものに気持ちよさがあるとか、音楽と同期して手を動かすことが心地よいとか、いろんな攻め方があるものだ。「ゲームの名作」だけを遊んで、ゲームを作っている人に感じる違和感は、ゲームのメカニズムやネタ要素だけをコピーしていて、細かなサービスを忘れていることだ。

話がずれるが、中毒性を生み出すには、「リトライの敷居を限りなく下げる」ことが効果的で、これも「リスク&リターン」には含まれていない要素の一つだ。

「複数回の試行につき一回のリターンがある」ものが最もネズミが「はまりやすい」ゲームであると、心理学の授業で教わった。これはまさに賭け事のゲームデザインであって、スマホ向けのソーシャルゲームもそうだし、アンディーメンテのゲームなんかもそうだ。Wisplisp Heehawでは、ゲームのメニューを排し、ショットボタン一つでリトライ出来るようにスタート画面を変更した。

そもそも賭け事を行わない人間が居ることも、知っておくべきことの一つだ。自分がよく行っているのは、本屋に行って雑誌を立ち読みしている人が何を読んでいるのかのぞき見することだ。ゲームをしない人間が何に興味を持っているのか?言い換えれば、何に時間を消費しているのか?ゲーム要素などに興味を振り向けず、知的(?)欲求に時間を使っている人間も多くいるものだ。

ゲームメカニズムのコアは「リスクとリターン」でいいと思うが、多くのユーザに興味を持ってもらえるよう、題材を工夫したり、視覚要素を調整することは基本的なことだ。良く出来ているゲームが「名作」になりうるのは、それからの話だと思っている。